サスティナブル

<企業研究:イケウチオーガニック>民事再生をきっかけに自社ブランドをはじめたタオル屋

僕は仕事柄、多くの企業研究をすることがあります。

その中で「この会社はすごい!」「真似るべきところがたくさんある」という会社に出会うことがあります。

今回はアパレル経営で学ぶべきことがたくさん企業をご紹介します。

IKEUCHI ORGANIC株式会社

まずは会社情報です。

会社名: IKEUCHI ORGANIC 株式会社
代表取締役: 阿部 哲也
創業 :1953年(昭和28年)2月11日
設立 :1969年(昭和44年)2月12日
本社:〒794-0084 愛媛県今治市延喜甲762番地
代表電話番号:(法人)0898-31-2255
東京オフィス: 〒107-0062 東京都港区南青山6-2-13 2F
電話番号:03-6427-7871
資本金:70,000千円
決算期:2月
事業内容:オーガニックテキスタイルの企画・製造・販売(タオル、マフラー、ベッドリネン、インテリアファブリック、アパレル素材など)
HP:https://www.ikeuchi.org/

OEM時代〜民事再生法適応まで

こちらの会社は、もともとタオルのOEM事業を30年ほどやっていました。

しかし2003年に取引先(タオル問屋)が民事再生法適応(ざっくり言うと倒産)となりました。

そのあおりを受けてついにイケウチオーガニックも民事再生となってしまいます。

この頃、日本は不況の真っ只中でしたね。

民事再生適応され再出発を目指す際、イケウチオーガニックは既存のOEM事業ではなく、新たに自社ブランドを作り育てることで経営の立て直していくことを決断しました。

自社ブランドを育てるためにやったこと=ファンづくり

イケウチオーガニックは自社ブランドをどのように育ててきたのでしょうか。

その答えは「小さな会社のファンづくり」の実践に答えがありました。

商品×コミュニケーション=ファンづくりと考え、その年に収穫できた綿花だけで作った、「コットンヌーボー」というブランドを作り、ユーザーとのコミュニケーションをとる戦略を実施してきました。

*コットンヌーボー:ワインのボジョレーヌーボーのようにその年のコットンだけでタオルを作る。(通常は、3、2、1年前の綿花を混ぜて均一化し作る)

 

そしてその後は様々な取り組みを進めていきます。

  • 直営店の展開。売り場に洗濯機を置く。
  • タオルソムリエの配置。
  • ストアで年に3−4回、コミュニケーションをとるイベントをやる。

などなど。

とにかく、お客様から商品やサービスの要望などを聞き、生かしていきます。

イケウチオーガニックの方はこう話します。
「ファンを作るのは、直接話す=イベント型が大切」
イベントは、手間もかかるし、コスパも悪いが、熱量のあるお客様を生んでいく!と。

ファンの作り方

ここでイケウチオーガニック流のファンの作り方を見ていきたいと思います。

①まずは、既存顧客にどんな情報が欲しいかアンケートをする。
すると、タオルを作っている人やソムリエ(店舗の人)のことを知りたいという声が多いことがわかりました。

②次に職人や店舗スタッフと会える・ゆっくり話ができるファンイベントを頻繁に開催しました。(タオル工場に招待してファンイベントを開催するなど)

③そしてファン同士でも繋がれるようにしたいと考え、オウンドメディアの企画、運営を行い、ファンや社員、ものづくりの理念を伝えていきました。

その際、記事ネタやクローズアップする内容は、有名・無名に関係なく、自社ブランドを好きな人、語れる人をチョイスしていくことにこだわったようです。

④今後は、”自社以外の場所”での接点を増やすために、生活者の接点を見直す⇨体験の場を増やす取り組み進めていくそうです。(銭湯やレストランのおしぼりなど、お店以外の体験の場を増やす)

ファンづくりのステップが明確で、理に叶っていますね。

これから取り組みたい、メンテナンス事業

イケウチタオルのバスタオルは、5−10千円くらいします。

決して安くない商品です。

お客様も買うまでに時間がかかるため、購入後は長く使いたいと思っています。

しかし洗濯方法を誤まるとタオルはすぐダメになります。愛着が湧いたタオルをメンテナンスして長く使いたい!こういった声に答えていきたいと考えています。

組織制度・目標管理・働きがい

イケウチオーガニックでは、社内の人事評価で売上や利益目標達成を目的にしていないのが特徴です。

売上を作って発展させるというより、次の世代に続けていくことを重要視しているからです。

ファンイベントなどでは、施策のKPIはお客様のアンケート結果の答えを重要視していて売ることを最優先にしていません。

施策とKPIは切り離して考えないといけない。

そう考えているそうです。

とにかく顧客満足度を高めていくのがミッションなのです。

また、工場で働く職人から見たとき、これまでは誰のために作っているのかが見えにくかった。=働きがい、やりがいを感じることが難しかったそうですが、ファンイベントで工場見学を定期的に行うことで、エンドユーザーとつながり、「お客様の顔」が見えて、職人さんたちの働きがいにつながる効果があったようです。

まさに「ファンづくり」を戦略の中心に置いて成長してきた老舗企業なのです。

編集後記

イケウチオーガニックは、もともと他ブランドのタオルを生産する会社でした。

相手先ブランドメーカーってやつですね。

しかし民事再生をきっかけに見事に自社ブランドを築いてきました。

その成長プロセスには常に「ファンづくり」が中心にありました。

ファンづくりやブランドづくりは多くの場合、取り組み価値自体が売上や利益など数値で測定しにくく、経営評価しづらいです。

一般企業はすぐに結果が出やすい施策、戦略を取りがちです。

しかしイケウチオーガニックは、トップや経営層が「事業をじっくり育てる」ことにこだわって経営してきたのだと感じました。

ABOUT ME
竹内 真
FASHION×IT×SOLUTION ファッション業界8年、EC業界12年やってます /ファッション企業の経営者(志望含む)向けに情報発信 / ファッション業界のEC事業を研究 /